授業紹介

教養教育科目

基礎自然科学

高等学校での学びと大学での専門教育の橋渡しを行う

「基礎自然科学」では、生命のしくみや生体の機能について、化学や物理の視点からも学ぶことで、生命現象や疾病の発生メカニズムを深く理解する手助けをします。4月の入学直後から履修するこの科目は、高等学校での生物や化学の学びを基に、より専門的な内容へとつなげていきます。

私たちの体は数十兆の細胞で構成されています。これらの細胞や生体分子がどのように協調して機能し、体内の環境がどのように調節されるのか、そして疾患がどのように発生するのか、を理解するための基盤となるように授業が構成されています。具体的には、栄養やエネルギー代謝、遺伝の基礎、血液や免疫の機能、体の恒常性を保つしくみなどについて学びます。さらに、放射線の性質やその影響、そして医療での利用やその安全対策についても学びます。

これらの学びは、看護学部での今後の学修、特に生化学や栄養学、生理学、薬理学といった専門科目への理解をより深めます。未来の看護師として、体のしくみや健康に関わるさまざまな要因を総合的に捉え、質の高い医療を提供するための入り口となる科目です。

看護専門科目:基礎看護学

フィジカルアセスメント

看護に必要な情報を収集するための観察技術を学ぶ

1年後期に学修するフィジカルアセスメントでは、看護に必要な情報を収集するための身体面の観察技術(問診・視診・触診・打診・聴診・測定)と、観察した結果から患者の健康状態を評価するまでの過程を講義と演習を繰り返しながら学んでいきます。演習では、学生同士で患者役・看護者役となり練習します。また、大学では、学部学生に加え、メディカルスタッフの研修用にシミュレーション機器が多く備えられており、それらを活用しながら学修していきます。

フィジカルアセスメントの授業風景です。

看護過程演習

看護を実践する際に用いる「看護過程」について演習を通して学ぶ

看護過程演習の授業風景です。

対象の情報収集、アセスメント、全体像の把握、問題抽出、看護計画立案、実施、評価からなる「看護過程」は、1年後期に講義を中心に学びます。2年前期に行われるこの授業では、演習を中心に、看護の対象となる人々に計画的に看護を実践する能力と看護技術を適切に実施する能力を身につけることを目指し学修していきます。個人学修だけでなくグループ学修を通して、多くの意見や見方に接しながら理解を深めていきます。また、看護過程を展開している紙上事例の患者に対する情報収集・看護ケアを、病院での実践場面を再現した中で経験し、その経験を振り返って、知識・観察力・実践力を身につけるという、シミュレーション教育を活用した演習を行います。

看護専門科目:成人看護学

成人急性期看護学演習

急性期看護や周手術期看護の習得を目指す

この授業では、2年生後期に成人急性期看護方法論で取り組んだ事例や学んだ知識を活用して、模擬患者やシミュレーターを使っての臨床現場を再現し、急性期・周手術期分野で必要とされる看護ケアの習得を目指しています。その中では、教員に加え実習病院先の臨床看護師からの指導を受けることで、より実践に対するイメージがつきやすく理解を深めることができます。

心電図モニターを装着する授業では、実際の検査時を想定して配慮することやモニターの見方のポイントを臨床看護師からマンツーマンで教えてもらいます。

手術をした後の患者さんは1人ではなかなか体の清潔を保つことはできません。この授業は手術後の患者さんに対して清潔ケアを実践している場面です。臨床看護師に温かく見守られて、緊張しながらも事前学習の成果を実践しています。

最後は救命救急法の授業です。チーム一丸となって、患者さんを助けるためにどうしたらよいかと、一生懸命考え取組んだ時間はここでしか得ることができない経験です。さらにiPadを使って自分たちの動きを確認、振り返ることで救命に必要なチームワークも備わってきます。

成人急性期看護学演習の授業風景です。 成人急性期看護学演習の授業風景です。

成人慢性期看護学演習

病とともに生きる人と家族への看護援助を体験により学ぶ

成人慢性期看護学演習の授業風景です。

慢性期にある患者は疾患の治癒が望めないため、折り合いをつけながら病とともに生活する自分なりの方法を見つけることが重要になります。成人慢性期看護学演習では、患者の強みに着目し、それまでの人生や生活という糸を少しほどいて「編みなおす」ことができるための看護援助について学びます。演習は慢性期看護を実践してきた看護教員、隣接する附属病院の看護師と共に、臨床に近い状況を想定して進めます。

糖尿病看護の演習では、1年次から学んできた他の科目と関連付けながら、糖尿病患者の事例を通して、血糖測定器やインスリン注射を用いた患者教育、フットケア、ロールプレイなどの演習を行います。演習では学生同士で患者役と看護師役を経験しながら、患者を生活者として捉え、病とともに生きる人と家族への看護援助を理解することを目指しています。

慢性疾患は長い時間をかけて変化し、いずれ最期を迎えます。終末期看護の演習では、患者が最期を迎えるまでのプロセスやエンゼルケアの演習を体験しながら、対象者の尊厳を大切にした看護援助について学びます。エンゼルケア演習は、「講義だけではエンゼルケアの本当の大切さがわからないので演習を行えてよかった」と学生からの評価が得られています。

看護専門科目:老年看護学

老年看護方法論

高齢者の特性や援助方法について学ぶ

この授業では、ライフステージの最終にあり、加齢に伴う身体的変化や慢性疾患を多く持つ高齢者の特性について学び、様々な特性に応じた高齢者の持てる力を引き出す援助の方法を考察することで、高齢者の尊厳と QOL を支える看護のあり方について理解を深めていきます。そして、高齢者の生活する場が多様であることを学ぶことで、多職種との連携の必要性やその人らしく生きるための支援のあり方についても考察できる能力を養います。

老年看護学演習

高齢者を包括的に支援する方法について演習を通して学ぶ

この授業では、高齢者を包括的に支援するために、高齢者のこれまでの生活習慣や特徴的な疾患・ 症状を学び、障害をもちながら生活する高齢者や家族の思いに対する理解を深め、チームアプローチや社会資源の活用方法について考察します。また、個々の生活の場に応じて、その人らしく生きることを支援する看護実践を行うために、高齢者の生活機能の視点からアセスメントを行い、対象者のもてる力を引き出す援助を実践する能力を養います。

看護専門科目:小児看護学

小児看護学演習

子どもの成長発達と健康を促進するために必要な知識や看護技術を学ぶ

小児看護学演習では、子どもの成長発達と健康生活を促進するために必要な知識や看護技術を習得します。健康障害をもつ子どもとその家族に対して主要な症状に合わせた看護援助方法、救急処置が必要な小児の看護援助方法を学びます。具体的には新生児モデル人形を使用して心拍数や呼吸数を実際に聴取しフィジカルアセスメントを行ったり、年齢の異なる人形で身体計測を行い成長発達の評価方法も学びます。入院している子どもとその家族に提供する看護について実際の様子がイメージ出来るよう点滴治療を行っている子どもの場面を設定し必要な援助についてグループで討議し様々な視点から考えます。

また、実際にチャイルドヴィジョンを装着し子どもの視野の狭さを実感した上で安全な療養環境について学びます。治療・検査を受ける子どもと家族に対して分かりやすい言葉で説明し子どもが安心して治療・検査に臨めるような援助方法をグループ毎に考案し、プレゼンテーションを実施します(写真)。治療が必要な子どもとその家族に対して、子どもの成長・発達を考慮した援助方法を発展的に考えることができることを到達目標として授業を行っています。

小児看護学演習の授業風景です。

看護専門科目:母性看護学

母性看護方法論

妊娠期と分娩期の看護実践について学ぶ

母性看護方法論の授業風景です。

新しい家族のスタート時期にあたる妊娠期と分娩(出産)期の看護実践について学びます。この時期にある母子双方の健康の保持増進、そして異常の予防に向けた基礎知識や看護ケアの基本を学修します。具体的には妊娠・分娩経過に応じた女性の心身・社会的変化と児(子)の成長発育について理解します。加えて、それぞれの時期に起こりやすい不調や異常の予防方法なども学びます。

この授業では、望ましい看護ケアの方法を学生同士で話し合う機会をもったり、先輩にあたる第4学年の助産学生からのサポートを受けながら分娩のメカニズムを学んだりします。第3学年からの母性看護学実習での看護実践をイメージしながら、学生たちが主体的に学ぶことができるよう工夫しています。

看護専門科目:精神看護学

精神看護方法論

患者理解だけではなく自己理解につなげる『知』を学ぶ

精神看護学は、精神科の看護だけでなく、人々の心の健康についても学ぶ科目です。精神の病気は、同じ病名でも、症状が人それぞれ異なります。なぜかと言うと、個人個人の考えや感情がその症状に影響するからです。

精神看護方法論では、患者とその家族に対するケアの基本的な知識とスキルを学びます。授業では事例を使ったグループワークや講義を通じて、患者としてだけでなく、生活者としての側面、心理的・社会的側面を考慮し、リカバリーの過程(希望を創造し実現していく旅)を支援する方法を探求します。このグループワークでは、スマートフォンなどを活用して、多様な意見を全体で共有し合います。

さらに、精神看護では、看護師自身がケアの道具として重要な役割を果たします。私たちの持つ知識や技術だけでなく、これまでの経験や感情もケアに活かされます。そのため、精神看護方法論での学びは患者を理解するだけでなく、看護師としての自分自身と向きあい、不安や葛藤を乗り越え、成長していくための知識となります。

精神看護方法論の授業風景です。

看護専門科目:在宅・地域看護学

在宅看護学演習

地域における様々な場での暮らしを支える看護を学ぶ

地域・在宅看護では、地域の多様な場で生活する、様々な健康レベルの人々を支える看護を学びます。この授業では居宅を訪問する上での療養者や家族の生活スタイルやその人らしさを尊重した態度を習得し、在宅療養者・家族のニーズに応じた日常生活援助の方法を、実習室(在宅)を活用して演習を進めます。在宅における医療福祉機器の管理や家族が行うケアについて、福祉用具専門相談員を講師に迎え筋委縮性側索硬化症の方が使用している視線入力の体験や、人工呼吸器の安全な取り扱い等、様々な医療機器に触れる体験を通して、基本的技術を習得します。

看護専門科目:看護の統合と実践

災害ケア論

災害が人々に与える影響や、看護職者にできる災害支援について学ぶ

本学では、東日本大震災を通じて得られた教訓を学問的に体系立て、将来起こり得る大災害に備え、有為な医療人を育成することを目標にしています。そのため、1年次から災害看護について学びます。いろいろな災害の種類や、災害時の健康問題、それに医療・看護がどのような役割を果たすことができるのか、災害時の医療救護活動の基本について学修します。災害時に治療の優先順位を決めるためのトリアージや、避難所の運営について机上でシミュレーションを行います。

緩和ケア論

患者と家族のつらさを受け止め「生きる」希望を見出すケアを考える

緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLの維持・向上を図るアプローチです。緩和ケアは「治療と並行して」行われ、病院や在宅などあらゆる場で必要とされています。

緩和ケアの対象となる患者と家族は、身体的な痛み(痛みや吐き気など)、精神的な痛み(不安やいらだちなど)、社会的な痛み(経済的な問題など)、スピリチュアルペイン(死への恐怖や人生の意味への問い)などさまざまなつらさを抱えているため、つらさを受け止め和らげることが看護師の役割です。患者と家族は、病によってつらさが生じるだけでなく、日常生活も変化していきます。それでも、患者と家族が大切にしてきたことを丁寧に聴いていくことで、つらい状況のなかでの「生きる」希望を見出すことができます。講義の中では、緩和ケアにおいて重要なコミュニケーションについても学んでいきます。

この科目は、緩和ケアの実践や教育に携わっている医師・看護師が教授します。看護師はスペシャリストである緩和ケア認定看護師やがん看護専門看護師が担当し、講義だけでなく事例検討を通して緩和ケアについて考えます。「not doing, but being」の意味を、講義の中で深めていきます。

緩和ケア論の授業風景です。

公衆衛生看護学関連科目群

公衆衛生看護方法論

住民の健康課題を捉え、解決する方法を学ぶ

公衆衛生看護方法論の授業風景です。

本学には保健師養成課程があり、選抜された学生を対象に3年次より講義が開始となります。公衆衛生看護方法論は、保健師養成課程の一科目です。地域における看護活動の具体的な方法として、個人・家族、集団、地区組織を単位とした住民の健康課題の支援方法について学びます。事例をもとに対象の生活背景と健康課題との関連を捉え、保健行動理論等を活用しながらニーズに即した保健指導の在り方を検討します。

健康教育演習では、事例の地区の健康課題を捉え、小集団に対する健康教育を企画し、指導案にそって展開します。わかりやすく保健指導できるよう、グループに分かれ適切な教育媒体を選択又は作成し、準備を行います。学生が地域住民役となり、健康教育を実際に行います。実施後は内容を振り返り、参加者の反応もふまえて実施内容を評価します。

この演習での経験を活かし、4年次の公衆衛生看護学実習では、実際に地域住民を対象に健康教育を実施し、保健指導についての学びを深めます。

助産学関連科目群

助産診断技術学Ⅳ

女性の主体性を尊重した助産の技術(わざ)を学ぶ

安全で安楽な分娩遂行に向けた助産診断と助産技術の基本を学びます。分娩経過中の母子の健康状態を把握し、順調な分娩進行に向けた個別性のある助産ケアを考え、実践するための助産の技術(わざ)を探求していきます。

具体的には、「反転授業」という手法を取り入れています。学生は講義前に教員作成の分娩介助技術の動画を自宅で繰り返し見て技術をインプットさせます。講義内では演習や意見交換を行い知識・技術をアウトプットして技を定着させていく工夫を行っています。女性が主体性のある出産を成し遂げられるよう、安全で母子に優しいケアのあり方を幅広く学修し、助産師の専門性を発揮するための基盤を養うことができます。臨地実習に直結する演習であるため、互いに切磋琢磨しながら自主練習に取り組み、助産技術の習得に励んでいます。

また、講義内では、出産時の姿勢を産婦の意向に沿って決められる「フリースタイル分娩」の助産技術も学びます。開業助産師の熟練した「わざ」を見つめ、自分たちのわざに磨きをかけようと真剣に取り組んでいます。模型を使用したり、時には自ら模擬産婦になってみたりと、ロールプレイと振り返りを繰り返しながら、助産観の醸成と安全・安楽な助産ケアを構築していきます。

母性看護方法論の授業風景です。

自由科目

臨床微生物学・感染症学 感染制御・感染看護演習

感染症について低学年次と高学年次で包括的に学修する

臨床微生物学・感染症学および感染制御・感染看護演習の様子です。

看護師にとって感染症対策について学修することは必須です。本学においても1年次に受講する感染免疫学にて病原体が関わる感染症と防御機構である免疫機能について学修しています。新型コロナウイルス感染症流行を契機に令和3年文部科学省より感染症医療人材養成事業に採択されました。この事業を元に本学では3年次および4年次対象に講義形式の「臨床微生物学・感染症学」および演習形式の「感染制御・感染看護演習」を開講しています。

3年次以降において看護技術の習得を経ることで感染症に関する知識や感染予防に対する意識が高まる中で、1年次に取得した知識をより深く考察する機会を得ています。さらに、実際の感染保護具の装着訓練を通して、現場での感染症対策に関して非常に興味深く学修を行っています。これらの科目の特徴的な点は、異なる学年の学生が同じテーマで討論・考察することで、お互いの知識や技術について高めあうことであり、異なる学年の視点の違いを実感することで自らの知識について深い考察が可能になっています。

このように、感染症について低学年次と高学年次で包括的に学修する両科目は、他の看護師教育にはない本学の特徴となります。